林業ってどんなことをするの?
木を伐ってるイメージしかないよ。
木を伐るだけが林業じゃないの…⁈
林業ってなにをするの?
こんな疑問にお答えします。
この記事の内容
- 林業のやること
- 林業の役割
- 自伐型林業のススメ
この記事の信頼性
この記事を書いているぼくは、副業として自伐型林業をしています。
林業は日本にとって変えのきかない産業の1つです。
そのすばらしさを広げるためにブログなどで発信中。
会社員をやりながら、林業をはじめてみました。
自分のペースで木を伐って楽しんでいますよ!
前置きが長くなりましたが、さっそく林業について説明します!
林業のやることは…?業務内容を大公開
林業とは……
『森林を管理し、維持するための一連の活動』
なんだか堅苦しい表現ですが、「山を管理する」お仕事ってことです。
そのために、やることは多岐にわたります。
林業としてやる業務 8つ
木の成長にはとても時間がかかります。
数十年以上のサイクルで継続していく必要があります。
- 地ごしらえする
- 苗木を植える
- 枝打ち・剪定して木をそだてる
- 間伐をする
- 主伐をする
- 木材をはこぶ
- 木材などの販売で収益化
- 下刈りなどの定期保全
大きくわけると、やることはこんなに!
1つずつ詳しくやることを見てみましょう。
1. 地ごしらえをする
木を植えるための下準備です。
- 木の根などを取りのぞく
- 不要な植物を刈り取る
- 地面を平面にならす
畑や田んぼと同じように、木を植えるのに適した土地にします。
必要があれば、肥料などをつかって土壌改良を行うことも。
木がしっかり大きく育つための大事な土台作りです。
日本には放置された山林ばかり。
地ごしらえをするのは、最後になることが多いかな。
2. 苗木を植える
育てたい木を植えます。
山林をどうしたいのかで、木の種類を選定。
- 建築材を40年後に伐採したい
- 紅葉がキレイな山にしたい
- 収穫できる木の実があるといいな
目的にあわせて、木をえらびます。
正解・不正解はありません。
日当たりや気候に適した選定が大切です。
環境が合っていないとうまく育ちません。
目的、地域、環境に適した苗木を植えます
ぼくは「花粉の撲滅」が目標。
植える木は、観賞用か食料用がおおいです。
建築材なら無花粉スギをえらびます。
3. 枝打ち・剪定をして木をそだてる
木が育ってくると枝打ちをします。
建築材にするための木材なら必ずやりましょう。
枝をそのままにして育てると、木材にフシが残って価値が下がってしまいます。
ちゃんと枝打ちすることで、上質な建築材ができあがります。
建築材でなくても、周囲の木との干渉がある場合は剪定が必要です。
ステキな木を育てるための重要な作業
- 枝打ち
- 剪定
4. 間伐をする
木が成長してくると、枝をはりめぐらすためのスペースが広く必要です。
ぎゅうぎゅうで木が生えている山がありますが、間伐されずに放置されている状態です。
間伐をしないと、木は細いままで太く育ちません。
しっかり、太く立派な木を育てるためには適度な間伐が必須です。
この作業でようやく、おおくの人がイメージする「木を伐倒する」ことになります。
間伐材は利用価値が少ないです。
そのまま山に転がしてあることも珍しくありません。
どうして間伐材を放置しておくの?
もったいない気がする。
運搬コスト(労力)と、木材価値が見合わないからです。
細い木でも、運ぶのは大変。
がんばって運んでも、時給500円以下なんてことも…。
5. 主伐をする
だれもがイメージする林業のお仕事。主伐。
成長して使えるようになった木材を伐り倒します。
海外では重機でやってしまうこともありますが、日本はチェンソーでの伐倒が主流です。
切り込みを入れて、狙った方向へ倒します。
簡単に思えますが、とても危険な作業なので訓練が必要です。
大きく育った木材は、主に建築材として利用されることになります。
この作業は40〜50年に1度くらい。
毎年、収穫しようとしたら広大な山林が必要になります。
6. 木材を運ぶ
切り倒したばかりの木は、とにかく重いです。
乾燥していないので、ずっしりと重みがあります。
個人的には、丸太を運ぶ作業がイチバン大変だと思います。
運び出す方法は様々です。
- 重機
- 小型運搬車
- つるしだし
- 人のチカラで運ぶ
大規模事業者は重機でトラックに積み込むのが一般的。
でも、重機の入れない山の奥では、人力、小型運搬車など工夫して運び出します。
ぼくのような自伐型林業では大きな木材は運べません。
建築材を出荷したい場合は業者に引き取ってもらうか、運べる大きさにカットします。
自伐型林業では「木材の運搬」「売るときの大きさ」がポイントになります。
7. 木材などの販売で収益化
海外の安価な木材を輸入するようになってから、木材価格はおおきく下落しています。
わざわざ何十年も木を育てて、その丸太の価格は16,000〜18,000円/㎥ 程度。
労力の割に稼げないのが、林業の実態です。
それでも、工夫と国の補助でなんとか収益化はできます。
- 木材を建築材として販売
- 薪をつくる
- 木の駅プロジェクト参加
- 燃料として買取業者へ
- 木工細工をネット販売
- 昆虫の採取
- キノコを育てる
- 山菜の収穫
木を伐って売るということだけにこだわらなければ、工夫しだいでいくらでも収益化できます。
大きく稼ぐのはむずかしいですが……
8. 下刈りなどの定期保全
ほどよく地面に日光が差し込むと雑草が育ちます。
苗木にとどいてほしい水・日光が雑草に奪われてしまってはいけません。
草刈機で生えてきた雑草を刈り払います。
夏場はすぐに雑草が生い茂るので、定期的に下刈りをします。
スズメバチなどの害虫による被害が発生する過酷な作業。
「草を刈るだけでしょ?」と、思うかもしれませんが、山の中を歩き回りながらの作業は想像以上にキツいです。
ぼくは草刈りがあまり好きではありません。
けっこうサボっています。
林業の役割はこの6つ
ここからは林業の役割について。
あまり知られていませんが、林業にはとても重要な役割があります。
日本は国土の7割が山林だと言われています。
いろいろな面からひとの生活を支えているんですよ。
- 土砂崩れなどの災害抑制
- 森林による水質浄化作用
- 木材などの資源が得られる
- 地球温暖化を防ぐ
- キレイな山で自然を楽しめる
- 野生生物が山で暮らせる
林業をやるひとがいなくなると、これらの役割が果たせなくなってしまうかも…⁈
山の木がやせほそり、土砂崩れがおきやすくなり、野生生物の食べ物が減り、キャンプなどは危険で楽しめなくなります。
さらに森林の木が減ると、CO2の吸収量が減り、地球環境がわるくなる可能性もあります。
大げさに思われるかもしれませんが、それくらい林業の果たしている役割は重要です。
役割①:土砂崩れなどの災害抑制
台風などの大雨で土砂災害が発生することがありますよね。
その原因の1つに山の荒廃があげられます。
だれも手入れしてない山林は、木が密集してしまいます。
木が育つスペースや栄養が足りずに、よわよわしい木ばかりの山になってしまいます。
そこへ暴風雨が来たらひとたまりもありません。
やせた木や土壌は流されて、土砂災害につながるのです。
山林でのメガソーラー投資は反対派。
山を切り崩してまで投資しないで。
役割②:森林による水質浄化作用
森林は水をきれいにする機能を持っています。
- 汚れを濾過(ろか)する
- 酸性度の調整
雨のなかには汚れや、酸性物質が混ざっています。
それを森林がきれいに濾過して汚れをキャッチ!
酸性物質も吸収して、水質を改善してくれます。
森林ってすごい!
キレイになった水は、わき水や小川になって山をくだっていきます。
山のわき水が飲めるってステキですよね!
役割③:木材などの資源が得られる
林業といえばコレ!という役割です。
木材はいろんなところで使われています。
- 住宅
- 家具
- 紙
- エネルギー資源
日本人が生活するのに欠かせない木材。
それを林業が生みだしています。
安価な外材のせいで、国産木材の価値が落ちています。
日本の木にはポテンシャルがあると思うんだけどな……
役割④:地球温暖化を防ぐ
持続可能な林業をすることで、森林が大気中のCO2を吸収してくれます。
森林保護をすることで、国全体のCO2の排出量をおさえることができます。
地球の環境をよくしようとしたら、山林などの緑は欠かせません。
しっかり山林を保全することで地球環境の改善につながります。
温暖化の原因のCO2を抑制するために、林業はムシできない産業です。
役割⑤:キレイな山で自然を楽しめる
- キャンプ
- ハイキング
- 登山
- トレッキング
- スキー
- スノーボード
山でアウトドアを楽しめるのは、林業で山林を管理しているから。
放置された山では、安全に楽しむことはできません。
「ブッシュクラフト」「山を買って暮らす」
憧れて山を手に入れた人のなかには、管理が想像を絶する大変さで手放したなんてことも……
アウトドアを楽しめているのは当たり前じゃないですね。
役割⑥:野生生物が山で暮らせる
近年、害獣の被害が増えています。
山でクマに遭遇したら…恐ろしいですよね。
でも、クマからしたら、自分たちの生活圏にはいってきてビビられても…なんて思っているかもしれませんね。
食料が山の中にじゅうぶんにあれば、わざわざ人間の生活するエリアに動物は降りてきません。
人間のためだけの林業ではなく、野生生物が暮らしやすくするのも林業の役割です。
きのみのできる木をほとんど伐採して、スギばかり植えた昔の政策が、動物たちを苦しめているかも…。
さあ!みんなで林業をはじめよう!
ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。
林業について、ざっくり内容がわかったのではないでしょうか。
では、さっそく林業をはじめましょう!
重要で大切な産業であることは間違いありません!!
なんて言われても、簡単にやれる仕事ではありませんよね。
ここからは、林野庁のデータからさらにエグい実態に切り込みます。
林業の実態①:就業者人口の減少
就労年齢の比率は他の産業と大差はありませんが、就業者が減少し続けています。
日本の国土は7割が山林なのに、このままではマズい…!
国も補助金を出していますが、就労者の底上げまでには至っていません。
そこで!自伐型林業の出番です。
週末に林業をするだけでも効果があると思いますよ!
林業の実態②:かなり過酷な労働環境
林業は3Kの仕事なんて言われています。
- キツい
- 汚ない
- 危険
上記のグラフから災害が減っているように見えますが……
就労人口に対しての災害率を見ると、とんでもない数字が叩き出されます。
災害発生率は全産業の10倍!
全産業 | 2.7 |
林業 | 24.7 |
木材・木製品製造業 | 12.5 |
こんなに危険な仕事はいまどきありませんよね。
林業の実態③:成果と報酬のアンバランス
先ほどの3Kに「稼げない」をくわえて、4Kだとぼくは思っています。
「日本には欠かせない産業」「過酷な労働条件」
それなのに、報酬が低い……。
この平均給料を見てしまうと、「エアコンの効いた部屋でデスクワークをしていた方がいいや」ってなっちゃいますよね。
林業のおかれた状況は厳しいけれど……
林業に誇りをもって従事されている方々はたくさんいます。
しかし、高齢化が進み後継者不足は深刻です。
60歳の定年をきっかけに、林業へ転職される方もいるそうですが……
元気で健康なひとじゃないとやれませんよね。
ぼくは会社員で安定収入を得ながら、副業として林業に取り組んでいます。
林業での収入はスズメの涙。
ただただ お金がほしいなら、アルバイトをしたほうが手っ取り早いくらいです。
それでも、林業は社会のためになるという気概と、単純に楽しいというだけでやっています。
本業で林業をしましょう!なんてクチが裂けても言えません。
でも、副業や兼業での林業はぜひ挑戦していただきたい。
- 家族が山を保有している
- IT系の副業は苦手
- 身体を動かす趣味がほしい
- なんだか木を伐りたい気分
どんな理由でもいいと思います。
やってみて、合わないと思えばやめるだけです。
この記事を最後まで読んだあなたなら、自伐型林業がやれると思いますよ。